寒燈集・炉辺　會津八一

１　予罹災ののち西条に村居し一夜大いなる囲炉裏のほとりにて　　よめる歌これなり（第１首）　　　　ふるさと　の　ほた　の　ほなか　に　おもほゆる　　　　　　　　　　　　　　　　　　うらわかき　ひ　の　ちち　の　おもかげ	歌の解説
２　予罹災ののち西条に村居し一夜大いなる囲炉裏のほとりにて　　よめる歌これなり（第２首）　　　　かかる　ひ　も　みゆき　ふみ　わけ　まなび　す　と　　　　　　　　　　　　　　　　　　きやうせんせい　を　とひし　ちち　は　も	歌の解説
３　予罹災ののち西条に村居し一夜大いなる囲炉裏のほとりにて　　よめる歌これなり（第３首）　　　　かはぞひ　に　のら　に　いづれば　こゑ　あげて　　　　　　　　　　　　　　　　　　うたひましけむ　そんじゆく　の　みち	歌の解説
４　予罹災ののち西条に村居し一夜大いなる囲炉裏のほとりにて　　よめる歌これなり（第４首）　　　　あるとき　は　くりや　の　のき　に　をの　ふりて　　　　　　　　　　　　　　　　　　まき　わらし　けむ　ふぶき　する　ひ　を	歌の解説
５　予罹災ののち西条に村居し一夜大いなる囲炉裏のほとりにて　　よめる歌これなり（第５首）　　　　はひ　ふかく　ゐろり　に　くり　を　さぐらせて　　　　　　　　　　　　　　　　　　に　の　ほ　に　ちち　の　ほほゑまし　けむ	歌の解説
６　予罹災ののち西条に村居し一夜大いなる囲炉裏のほとりにて　　よめる歌これなり（第６首）　　　　あさ　ゆきて　まなびし　ふみ　の　からうた　を　　　　　　　　　　　　　　　　　　ひとり　ずし　つつ　いねし　よ　も　あらむ	歌の解説
７　予罹災ののち西条に村居し一夜大いなる囲炉裏のほとりにて　　よめる歌これなり（第７首）　　　　えうえう　たる　しんしん　たり　と　のち　さへ　も　　　　　　　　　　　　　　　　　　たまたま　ちち　の　うたひ　まし　けり	歌の解説
８　予罹災ののち西条に村居し一夜大いなる囲炉裏のほとりにて　　よめる歌これなり（第８首）　　　　ちち　わかく　ひ　に　かよはしし　そんじゆく　の　　　　　　　　　　　　　　　　　　かど　も　こだち　も　ゆくへ　しらず　も	歌の解説
９　予罹災ののち西条に村居し一夜大いなる囲炉裏のほとりにて　　よめる歌これなり（第９首）　　　　ちち　を　しる　ひと　も　いまさず　そんじゆく　の　　　　　　　　　　　　　　　　　　こだち　も　あらず　ふるさと　の　むら	歌の解説
10 予罹災ののち西条に村居し一夜大いなる囲炉裏のほとりにて　　よめる歌これなり（第１０首）　　　　わが　こゑ　の　ちち　に　にたり　と　なつかしむ　　　　　　　　　　　　　　　　　　おい　も　いまさず　かへり　きたれば	歌の解説
11 予罹災ののち西条に村居し一夜大いなる囲炉裏のほとりにて　　よめる歌これなり　　（第１１首）　　　　ちち　わかく　いませる　ころ　も　ほた　の　ひ　は　　　　　　　　　　　　　　　　　　いま　も　みる　ごと　もえ　つぎ　に　けむ	歌の解説
12 予罹災ののち西条に村居し一夜大いなる囲炉裏のほとりにて　　よめる歌これなり（第１２首）　　　　もの　みな　の　うつろふ　むら　の　みち　の　へ　に　　　　　　　　　　　　　　　　　　かげ　きよら　なる　みぞがは　の　みづ	歌の解説
13 予罹災ののち西条に村居し一夜大いなる囲炉裏のほとりにて　　よめる歌これなり（第１３首）　　　　この　やど　に　ちち　と　きたりて　いねし　よ　も　　　　　　　　　　　　　　　　　　とし　の　よそぢ　を　すぎ　に　ける　かも	歌の解説
14 予罹災ののち西条に村居し一夜大いなる囲炉裏のほとりにて　　よめる歌これなり（第１４首）　　　　ほとほとに　われ　おい　はてて　ふるさと　の　　　　　　　　　　　　　　　　　　ゐろり　に　ちち　の　わかき　ひ　を　おもふ	歌の解説