会津八一 鹿鳴集・望郷(七首)
                     いつの頃よりか大正十四年七月に至る
望郷 作者の郷里は新潟の市内なり。されど一生の大半を東京にて暮らし、罹災して困窮に陥りしために、やむなく老後の身を故郷に寄せ来りしなり。かへつて新潟の歌を詠むこと少きは、住むこと久しからざりしためなり。  (自註鹿鳴集より)
   

 
 会津八一は1881年(明治14)8月1日に新潟市古町通五番町に生まれ、1902年(明治35)21歳の時、東京専門学校(現早稲田大学)高等予科に入学する。1925年(大正14)44歳に早稲田大学附属高等学院教授になるまでに詠んだ若き日の望郷の歌を含む7首である。
 作品を収録した歌集「鹿鳴集」の刊行は1940年(昭和15)59歳の時、その鹿鳴集を自ら解説した「自註鹿鳴集」の刊行は1953年(昭和28)72歳の時である。

                                    会津八一の歌 索引

1 望郷(第1首)
    はる されば もゆる かはべ の をやなぎ の
                おぼつかなく も みづ まさり ゆく
  
歌の解説
 望郷(第2首)
    あさり す と こぎ たみ ゆけば おほかは の
                しま の やなぎ に うぐひす なく も
  
歌の解説
 望郷(第3首) 
    ふるさと の ふるえ の やなぎ はがくれ に
                
ゆうべ の ふね の もの かしぐ ころ        
歌の解説
 望郷(第4首) 
    よ を こめて あか くみ はなち おほかは の
                この てる つき に ふなで す らし も
       
歌の解説
 望郷(第5首) 
    かすみ たつ はま の まさご を ふみ さくみ
                か ゆき かく ゆき おもひ ぞ わが する
  
歌の解説
 望郷(第6首) 
    すべ も なく みゆき ふり つむ よ の ま にも
                ふるさとびと の おゆ らく をし も
       
歌の解説
 望郷(第7首) 
    みゆき ふる こし の あらの の あらしば の
                しばしば きみ を おもは ざらめ や
     
歌の解説
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