会津八一 寒燈集・霜余(六首)
                               昭和二十年三月
寒 燈 集




霜   余
「寒燈集は昭和19年6月から21年6月までの212首を収録した歌集。敗戦を挟んだ苦難の時代に詠まれた。空襲による罹災、疎開、きい子の死、その後の孤独な生活が奈良の歌とは違う新しい歌境を作っている。とりわけ、落合秋艸堂の自然を詠んだ歌(閑庭)、きい子への挽歌(山鳩、観音堂)、戦後の孤独な身辺の歌(炉辺、榾の火)は読む者の心に迫って来る」
「空襲がはげしくなる中、秋艸堂の霜のために傷んだ庭を詠む。そこには先行きへの不安のためか、重苦しさが漂っている」
                                        会津八一の歌 索引
1 霜余(第1首)
    いろづきし したば とぼしみ つゆじも に 
                 ぬれ たつ ばら の とげ あらは なり      
歌の解説
2 霜余(第2首)
    ばら の ね を さきて うづめし りんだう の 
                 はなぶさ しろく うつろひ に けり
歌の解説
3 霜余(第3首)
    しも あらき さには の つち に をれ ふして 
                 なほ みどり なる アカンサス あはれ        
歌の解説
4 霜余(第4首)
    しよくだう の まど の ひさし に かれ はてし 
                 ぶだう の つる も いまだ かかげず
歌の解説
5 霜余(第5首)
    とり はてて もの なき はた に おく しも の 
                 はだらに あをき にんどう の かき
歌の解説
6 霜余(第6首)
    あさひ さす リラ の しづえ に かけ すてし 
                 みかん の かは に かぜ そよぐ みゆ   
歌の解説
                   
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