会津八一 寒燈集・一路(三首)
                               昭和二十年十二月
寒 燈 集




一   路
「寒燈集は昭和19年6月から21年6月までの212首を収録した歌集。敗戦を挟んだ苦難の時代に詠まれた。空襲による罹災、疎開、きい子の死、その後の孤独な生活が奈良の歌とは違う新しい歌境を作っている。とりわけ、下落合秋艸堂の自然を詠んだ歌(閑庭)、きい子への挽歌(山鳩、観音堂)、戦後の孤独な身辺の歌(炉辺、榾の火)は読む者の心に迫って来る」
「きい子の死後、10月26日観音堂から丹呉邸に戻る。出版社等からわずかな原稿依頼も届きだした頃、敗戦後の暗い世情の中で、先行きを祈った八一の叫びである」  
                                        会津八一の歌 索引
1 つらつら世情をみてよめる(第1首)
    おほき ひと いでて をしへよ もろびと の 
                 よりて すすまむ ひとすぢ の みち       
歌の解説
2 つらつら世情をみてよめる(第2首)
    ひとつひ の ひかり も しらず くらき の の 
                 はて にも みち の あら ざらめ や も
歌の解説
3 つらつら世情をみてよめる(第3首)
    とこよ なす をぐらき のべ と あれぬ とも 
                 ひと ある ところ みち なか らめ や
歌の解説
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