会津八一 寒燈集以後・伐柳(六首)
                                昭和二十二年十一月
寒燈集以後


伐     柳
「寒燈集に入れなかったもの、及び以後に詠まれた幽暗〜鐘銘、計57首を解説する。歌は會津八一全集巻四より選んだ。鐘銘は八一の最後の歌である」
「冬に備えて、古い柳の枝を切り落としている情景を詠んだ新潟の街の風物詩。新潟の生活が落ちついた八一は故郷の姿を静かに受け入れて詠う」
                                        会津八一の歌 索引
1 伐柳(第1首)
   新潟の市中には多く柳を植ゑ特異の景観をなせり旧幕の頃河村瑞軒
   来りてこの地に町奉行をつとめたる時遠く人を浙江の西湖に派しその苗を
   求めしめて植ゑたるに始まると伝ふ十一月十五日の夕予ひとり家を出でて
   市中を行くに残柳の枝間にところどころ人影ありてしきりに鉈を揮ふを見る
     まち ゆけば えだの たかき に ひと ありて 
                 やなぎ かる なり うすぐもる ひ を
歌の解説
2 伐柳(第2首)
     みゆき ふる ふゆ の きたる と まちびと の 
                 かり いそぐ らし はやなぎ の えだ
歌の解説
3 伐柳(第3首)
     みちばた の つち に しきたる あらごも に 
                 かりて つみたる はやなぎ の えだ
歌の解説
4 伐柳(第4首)
     かり そけて つち に みだるる はやなぎ の 
                  えだ ひき あそぶ ふるさと の こら
歌の解説
5 伐柳(第5首)
     かり すてし やなぎ の えだ の か に にほふ 
                  まち の ちまた の たそがるる ころ  
歌の解説
6 伐柳(第6首)
      ふるさと の ちまた の やなぎ いと かけて 
                  もゆる はるび の あやに こほし も
歌の解説
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