春 の 奈 良
2015・4・10

春の奈良1・メルヘンと鹿鳴人 2015・4・12(日)
 メルヘン(同級生の会)の奈良行き(4月10日)は久しぶりだ。行き先は京都、滋賀、奈良、兵庫の中からメンバーの希望が多かった奈良になった。
 奈良と言えば會津八一、彼を研究する素空には全く異存はないがもう一つの理由は奈良にはとても優しく物知りの鹿鳴人がいるからだ。素空の学生時代の同級生だが、今やメルヘンにとって彼なしに奈良旅行はありえない。そして、背後に隠された大きな理由は久しぶりに集まっておしゃべりをすることにある。
 近鉄四日市駅から車で、三重・愛知組が7時半に出発、兵庫からは奈良10時半集合でkimuちゃんが電車でやってくる。
 ところが予定より1時間も早く奈良に着いた。道路が空いていて走っている他の車が早かったからだろうが、それにしても早かったと感じたのは、盛り上がった車内のおしゃべりにもあるだろう。
 鹿鳴人と一緒にコーヒーを飲み、小雨の降る中、東大寺本坊(本坊襖絵一般公開)へ向かった。
        



春の奈良2・八一の歌碑 2015・4・15(水)
 東大寺本坊に入る前に鹿鳴人が誘ってくれたのは大仏殿前の八一の歌碑である。
   東大寺にて(第1首)    解説
     おほらかに もろて の ゆび を ひらかせて
                  おほき ほとけ は あまたらしたり 
 大仏をこの宇宙に広く満ち広がっておられる(あまたらしたり)と詠むこの歌にふさわしい大きなものである。高さ276cm、幅75cmの御影石で作られた石碑は台石をあわせると 3mを越える。
 予定に無かった歌碑見学に導く友人の心配りが嬉しい。彼を頼りにしたメルヘンの奈良見学は15年余になる。この歌碑を2000年9月23日に訪れている。     
        



春の奈良3・東大寺本坊 2015・4・17(金)
 今回の目玉は東大寺本坊にある日本画家・小泉淳作の襖絵である。5年がかりで取り組み、85歳で完成させた大作(平成22年)である。
 NHKの日曜美術館 「千年の花を咲かせたい ~小泉淳作・東大寺ふすま絵に挑む~」(2011年1月23日放送)で知ってからずっと見たいと思っ
ていた。公開は4月10日からわずか3日間、奈良行きが10日だったのはラッキーだ。この襖絵展については鹿鳴人のブログに紹介されている。小泉淳作の見事なしだれ桜を見て欲しい。襖絵には「東大寺本坊の桜」があるが、実際に本坊の庭のしだれ桜も見事に咲いていた。雨だったからか訪れる人が程良く、ゆっくりと鑑賞できた。
 その後、御本殿が公開されている春日大社に向かった。




春の奈良4・春日大社 2015・4・22(水)
 春日大社は20年に一度の社殿などの修理のため、4柱のご神体が仮殿に移されている。今年は第60次の式年造替(ぞうたい)である。それを記念して御本殿(国宝)が特別公開されている。特別公開は20年に一度と言う。本殿の前から、さらに140年ぶりに後(うしろ)からも参拝できると言う貴重な経験だった。
 通常、神社は本殿の前までは入れず、拝殿などから参拝する。子供の頃、「何があるのだろう?」と近くの神社の本殿に塀を乗り越えて入ったが、そこには小さな社殿があるだけだった。子供には立ち入り禁止の所に入ることに意味があったのだろう、そのことだけを鮮明に覚えている。
 春日大社の燈籠に囲まれた表参道をゆっくりと歩きながら、戦地に向かう若者の姿を詠んだ八一の歌を思っていた。
   かすがの の かみ の やしろ に たらちね と     解説
               たづさはり きて ひと の をろがむ
 
    (春日野の神の社にたらちねとたづさはり来て人のおろがむ)
        



春の奈良5・万葉植物園 2015・4・27(月)
 早大教授・大橋 一章(かつあき・1942年生れ)が今年出版した「會津八一」(中央公論新社)の中で“春日大社の万葉植物園にある八一の歌碑が彼の碑の中で一番素晴らしい”と書いてあったので、無性に行きたくなった。この歌碑を見るために兄に同行して貰ったのは随分前である。
 歌は彼の歌集のトップに出てくる「春日野にて(第1首)」である。
     かすがの に おしてる つき の ほがらかに     解説
           あき の ゆふべ と なり に ける かも 
    (春日野におし照る月のほがらかに秋の夕べとなりにけるかも)
 この植物園は9000坪の敷地に万葉集にかかわるものを含む約300種類の植物があり、代表的な万葉歌の陶板と植物解説が並んでいる。あいにくの雨で足早になったが、歌も観賞しながらゆっくりと散策すると楽しい一日になる。また、訪れたいと強く思った。
        



春の奈良6・頭塔(完) 2015・4・29(水)
 頭塔(ずとう)はあまり知られていない。奈良市高畑町にあるピラミッドのような土製の塔(土塔)で、一辺が30m、高さ10m、7段になっていて、石仏が配置されている。
 後世の研究で「仏塔」と結論付けられたが、玄昉の首塚であるという伝承から「頭塔」と呼ばれて来たらしい。ではこれはいったい何なのかと言うと難しいが、仏塔であるなら、お釈迦さんの遺骨(舎利)を安置した場所と言うことになる。各地の寺にある塔と同じようなものだと思われる。
 壁面にある仏像を双眼鏡でながめたりしてひと時を過ごした。ここもずっと訪れたいと思っていた所なので、見学の予約をしてくれた鹿鳴人にとても感謝している。
 最後に鹿鳴人の店「器まつもり」でお茶を頂いて休憩し、解散した。
 じっくりと奈良を味わったとても良い旅だったので、6回に分けてブログに書いた。(完)

  頭塔は鍵がかかっており事前の予約が必要。
    現地管理人・仲村表具店(0742-26-3171) 料金300円。
注2 春の奈良写真集へ
 
         
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