会津八一 寒燈集・火鉢(五首)
                               昭和二十年三月
寒 燈 集




火   鉢
「寒燈集は昭和19年6月から21年6月までの212首を収録した歌集。敗戦を挟んだ苦難の時代に詠まれた。空襲による罹災、疎開、きい子の死、その後の孤独な生活が奈良の歌とは違う新しい歌境を作っている。とりわけ、落合秋艸堂の自然を詠んだ歌(閑庭)、きい子への挽歌(山鳩、観音堂)、戦後の孤独な身辺の歌(炉辺、榾の火)は読む者の心に迫って来る」
「大学は閉校状態、空襲は激しく、家に籠ることを余儀なくされたこの時期の夜から朝までの一夜を火鉢を題材に詠む」
                                        会津八一の歌 索引
1 火鉢(第1首)
    おほい なる カントンやき の みづがめ を 
                 ひばち と なしつ ふゆ の きぬれば
歌の解説
2 火鉢(第2首)
    おほい なる ひばち いだきて いにしへ の 
                 ふみ は よむ べし ながき ながよ を
歌の解説
3 火鉢(第3首)
    おほい なる ひばち の そこ に かすか なる 
                 ひだね を ひとり われ は ふき をり        
歌の解説
4 火鉢(第4首)
     さよ ふけて かき おこせども いたづらに 
                 おほき ひばち の ひだね ともし も
歌の解説
5 火鉢(第5首)
    あさまど を ひかげ さし いり そらいろ の 
                 ひばち の はひ の しろたへ に みゆ
歌の解説
                   
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