1 十八日室生を出で当麻を経て高野山に登り明王院に入るかねて 風邪の心地なりしを翌朝目さむれば薄雪降りしきて塔廟房舎みな 白し我が齡も大師を過ぐることすでに一歳なればおもひ更に深し(第1首) とき も なく ふり くる ゆき か くさまくら たび の ころも は あつ から なく に |
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2 十八日室生を出で当麻を経て高野山に登り明王院に入るかねて 風邪の心地なりしを翌朝目さむれば薄雪降りしきて塔廟房舎みな 白し我が齡も大師を過ぐることすでに一歳なればおもひ更に深し(第2首) いませりし よはひ は こぞ と すぎ はてし わが ころもで に ゆき な ふり そ ね |
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3 その朝金剛峰寺の霊宝館にて大師の絵像に対して(第1首) しづけさ の はな に ある ごと こんどう の 五こ たにぎりて おはし ます かも |
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4 その朝金剛峰寺の霊宝館にて大師の絵像に対して(第2首) すがしく も はなやぎて こそ おはしけれ につたうしやもん へんぜうこんがう |
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5 十九日高野山を下る熱ややたかければ学生のみ河内観心寺に遣り われひとり奈良のやどりに戻りて閑臥す(第1首) みゆき ふる かうや おり きて こもり ねし なら の やどり の よひ の ともしび |
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6 十九日高野山を下る熱ややたかければ学生のみ河内観心寺に遣り われひとり奈良のやどりに戻りて閑臥す(第2首) もりかげ の やど の ながや に ひとり ねし まくら に ちかき もの の ひとこゑ |
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7 十九日高野山を下る熱ややたかければ学生のみ河内観心寺に遣り われひとり奈良のやどりに戻りて閑臥す(第3首) かすがの の もり の こぬれ を つたひ きて さる なく らし も やど の ふるには |
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8 十九日高野山を下る熱ややたかければ学生のみ河内観心寺に遣り われひとり奈良のやどりに戻りて閑臥す(第4首) とりはてて ひとつ の かき も なき には の なに に しぬびて あそぶ さる かな |
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9 十九日高野山を下る熱ややたかければ学生のみ河内観心寺に遣り われひとり奈良のやどりに戻りて閑臥す(第5首) すめろぎ の くに たたかふ と かすが なる やまべ の さる の しらず か も あらむ |
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最後の奈良見学旅行4 (秋艸道人会津八一の學藝・植田重雄著)より
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