会津八一 山光集・香薬師(五首)
                               昭和十八年三月
  山光集  「昭和15年6月から昭和19年4月に至る4年間に詠まれた246首。
        戦争時代を色濃く反映した作品も含まれる。戦中、戦後の価値観の
        転換によりこの集は3度出版され、歌の取捨が行われている」


  三月二十八日報ありちか頃その寺に詣でて拝観するに香薬師像のたちまち
  何者にか盗み去られて今はすでにおはしまさずといふを聞きて詠める     5首

         香薬師を詠んだ歌は11首ある。 参照
                                        会津八一の歌 索引
1 三月二十八日報ありちか頃その寺に詣でて拝観するに香薬師像のたちまち
  何者にか盗み去られて今はすでにおはしまさずといふを聞きて詠める(第1首)
    をろがみて きのふ の ごとく かへり こし 
                 みほとけ すで に なしと いはず やも   
歌の解説
2 三月二十八日報ありちか頃その寺に詣でて拝観するに香薬師像のたちまち
  何者にか盗み去られて今はすでにおはしまさずといふを聞きて詠める(第2首)
    みほとけ は いかなる しこ の をのこら が 
                 やど にか たたす ゆめ の ごとく に
歌の解説
3 三月二十八日報ありちか頃その寺に詣でて拝観するに香薬師像のたちまち
  何者にか盗み去られて今はすでにおはしまさずといふを聞きて詠める(第3首)
    みほとけ は いまさず なりて ふる あめ に 
                 わが いしぶみ の ぬれ つつ か あらむ         
歌の解説
4 三月二十八日報ありちか頃その寺に詣でて拝観するに香薬師像のたちまち
  何者にか盗み去られて今はすでにおはしまさずといふを聞きて詠める(第4首)
    いでまして ふたたび かへり いませり し 
                 みてら の かど に われ たちまたむ   
歌の解説
5 三月二十八日報ありちか頃その寺に詣でて拝観するに香薬師像のたちまち
  何者にか盗み去られて今はすでにおはしまさずといふを聞きて詠める(第5首)
    かど の へ の たかまどやま を かれやま と 
                 そう は なげかむ こゑ の かぎり を   
歌の解説
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