会津八一 山光集・溷濁(八首)
                               昭和十七年三月
  山光集  「昭和15年6月から昭和19年4月に至る4年間に詠まれた246首。
        戦争時代を色濃く反映した作品も含まれる。戦中、戦後の価値観の
        転換によりこの集は3度出版され、歌の取捨が行われている」
  溷  濁  「こんだく。八一62歳、眼に濁りが生じたため、数度の診察を受け、
        眼帯をかけたり点薬をした。第8首では新薬師寺の香薬師に快癒を
        願っている。なお、この病のため、初めての歌碑建立(新薬師寺)の
        除幕式を欠席している」
                                        会津八一の歌 索引
1 わが右の眼の硝子体に溷濁を生じて(第1首)
    くもり ある わが まなぞこ を うかがふ と  
                 わかき はかせ の こらす いき かな 
歌の解説
2 わが右の眼の硝子体に溷濁を生じて(第2首)
    おいなみに くもれる まなこ いま の よ の 
                 おほき くすし も すべ なかる べし   
歌の解説
3 わが右の眼の硝子体に溷濁を生じて(第3首)
    くもり なき ふたつ の まなこ たまひたる 
                 わが たらちね は すでに いまさず   
歌の解説
4 わが右の眼の硝子体に溷濁を生じて(第4首)
    たのめりし ふたつ の まなこ くもる とも 
                 こころ さやけく すみ わたり なむ  
歌の解説
5 わが右の眼の硝子体に溷濁を生じて(第5首)
    うつせみ の まなこ くもりて むらぎもの 
                 こころ すめらば くるしく も あらむ   
歌の解説
6 わが右の眼の硝子体に溷濁を生じて(第6首)
    ここだく の くしき ほとけ を をろがみし 
                 まなこ くもる と たれ に かたらむ   
歌の解説
7 奈良の新薬師寺を思ひいでて(第1首)
    すめろぎ の おほき めやみ を かしこみ と 
                 とほき きさき の たてましし てら 
歌の解説
8 奈良の新薬師寺を思ひいでて(第2首)
   みほとけ は いま も いまさば わが ため に 
                 まなこ すがしく まもらせ たまへ 
歌の解説
                    
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