会津八一 寒燈集・泰山木(五首)
                               昭和十九年七月
寒 燈 集




泰 山 木
「寒燈集は昭和19年6月から21年6月までの212首を収録した歌集。敗戦を挟んだ苦難の時代に詠まれた。空襲による罹災、疎開、きい子の死、その後の孤独な生活が奈良の歌とは違う新しい歌境を作っている。とりわけ、落合秋艸堂の自然を詠んだ歌(閑庭)、きい子への挽歌(山鳩、観音堂)、戦後の孤独な身辺の歌(炉辺、榾の火)は読む者の心に迫って来る」
「斜め向かいに住む日本画家・大沢恒躬(つねみ)から泰山木の蕾を一つもらい瓶に活けた。泰山木の短い花の命を詠う」
                                        会津八一の歌 索引
1 泰山木(第1首)
    きぞ の よひ さして いねたる ひとえだ の  
                 たいさんぼく は さき いで に けり       
歌の解説
2 泰山木(第2首)
    ねそべりて もの かく あさ を かたはら に 
                 たいさんぼく の か に にほひ つつ      
歌の解説
3 泰山木(第3首)
    こちたく も にほへる はな か わが やど の 
                 かべ に ふるびし ふみ の みなか に        
歌の解説
4 泰山木(第4首)
    おほらかに ひとひ を さきて うつろへる 
                 たいさんぼく の はな の いろ かも
歌の解説
5 泰山木(第5首)
    さき はてて ひとひ の うち に うつろへる 
                 ましろき はな の こころ を ぞ おもふ
歌の解説
                   
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