会津八一 寒燈集・山精(五首)
                               昭和十九年七月
寒 燈 集




山   精
「寒燈集は昭和19年6月から21年6月までの212首を収録した歌集。敗戦を挟んだ苦難の時代に詠まれた。空襲による罹災、疎開、きい子の死、その後の孤独な生活が奈良の歌とは違う新しい歌境を作っている。とりわけ、落合秋艸堂の自然を詠んだ歌(閑庭)、きい子への挽歌(山鳩、観音堂)、戦後の孤独な身辺の歌(炉辺、榾の火)は読む者の心に迫って来る」
「斎藤茂吉の歌集・暁紅(ぎょうこう)に心打たれ、作歌した6首を茂吉に送る。その内の5首を山精(すだま)として寒燈集に入れた」
                                        会津八一の歌 索引
1 山精(第1首)
   七月二十九日さきに童馬山房主人より贈られし歌集「暁紅」をとり出して
   ふたたび読みもてゆくに感歎ますますふかしこえて五日この五首を記して
   箱根強羅なる山荘にこもれる主人のもとに寄す
     あめつち の いかなる ちから あともひて 
                 この ひとまき の われ に せまれる      
歌の解説
2 山精(第2首)
     あしびき の やま の すだま と こもり ゐて 
                 よみ けむ うた か さよ の くだち を      
歌の解説
3 山精(第3首)
     ふりさけて おもへば とほき いにしへ ゆ 
                 かかる きはみ に たれ か うたひし        
歌の解説
4 山精(第4首)
     いにしへ を わが する ごとく のち の よ は 
                 きみ を こほしみ たへ がて に せむ
歌の解説
5 山精(第5首)
     いかで われ ひとたび ゆきて うつしみ の  
                 きみ と あひ みむ あき の ひかげ に
歌の解説
                   
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