会津八一 寒燈集・このごろ(四首)
昭和二十年一月
寒 燈 集
このごろ
「寒燈集は昭和19年6月から21年6月までの212首を収録した歌集。敗戦を挟んだ苦難の時代に詠まれた。空襲による罹災、疎開、きい子の死、その後の孤独な生活が奈良の歌とは違う新しい歌境を作っている。とりわけ、落合秋艸堂の自然を詠んだ歌(閑庭)、きい子への挽歌(山鳩、観音堂)、戦後の孤独な身辺の歌(炉辺、榾の火)は読む者の心に迫って来る」
「戦争の敗色は濃く、すでにサイパン島からの東京への空襲は始まっていた。そんな日常の中で4首詠んだ」
会津八一の歌 索引
1 このごろ(第1首)
さにはべ に われ たち いでて まきし な の
つち さへ いてて かたき このごろ
歌の解説
2 このごろ(第2首)
ふみ よめば いよよ するどく いにしへ の
わが むなぞこ に ひびく このごろ
歌の解説
3 このごろ(第3首)
わが やど の かべ の ふるぶみ くれなゐ に
もえ なむ さま を おもふ このごろ
歌の解説
4 このごろ(第4首)
あをによし なら の みほとけ ひたすらに
さきく いませ と いのる このごろ
歌の解説