会津八一 寒燈集・榾の火(五首)
                               昭和二十年十二月
寒 燈 集




榾 の 火
「寒燈集は昭和19年6月から21年6月までの212首を収録した歌集。敗戦を挟んだ苦難の時代に詠まれた。空襲による罹災、疎開、きい子の死、その後の孤独な生活が奈良の歌とは違う新しい歌境を作っている。とりわけ、下落合秋艸堂の自然を詠んだ歌(閑庭)、きい子への挽歌(山鳩、観音堂)、戦後の孤独な身辺の歌(炉辺、榾の火)は読む者の心に迫って来る」
「きい子を亡くした八一は苦渋の中で昭和20年10月末から丹呉邸に移り、己を厳しい状態に置き、書物も読まず越年する。孤独の中での悲痛な叫びである」 
                                        会津八一の歌 索引
1 榾の火(第1首)
    あさひ さす ほた の ほ の へ の つるしがき 
                 ほの しろみ かも とし は きぬ らし       
歌の解説
2 榾の火(第2首)
    あなごもる けもの の ごとく ながき よ を 
                 ほた の ほかげ に せぐくまり をり
歌の解説
3 榾の火(第3首)
    ひと いねし ひろき くりや の いたのま に 
                 ひとり かよひて みづ のむ われ は      
歌の解説
4 榾の火(第4首)
    ひと いねて ひろき くりや に くだつ よ を 
                 まど しろたへ に いでし つき かも 
歌の解説
5 榾の火(第5首)
    いづく に か したたる みづ の きこえ きて 
                 ゐろり は さびし ゆきて はや ねむ      
歌の解説
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