会津八一 寒燈集・鉢の子(四首)
                               昭和二十年五月
寒 燈 集




鉢 の 子
「寒燈集は昭和19年6月から21年6月までの212首を収録した歌集。敗戦を挟んだ苦難の時代に詠まれた。空襲による罹災、疎開、きい子の死、その後の孤独な生活が奈良の歌とは違う新しい歌境を作っている。とりわけ、下落合秋艸堂の自然を詠んだ歌(閑庭)、きい子への挽歌(山鳩、観音堂)、戦後の孤独な身辺の歌(炉辺、榾の火)は読む者の心に迫って来る」
「若い時から敬慕し尊敬した良寛の隠棲した五合庵の訪問を、東京から新潟に疎開してやっと実現した」  
                                        会津八一の歌 索引
1 五月二十八日松野尾村に山本一郎を訪ひ三十日その案内にて弥彦神社に
  詣で山路を国上に出で良寛禅師が幽棲の故址を探る(第1首)
    いやひこ の このま こえ きて くがみ なる 
                 きみ が みあと を けふ みつる かも        
歌の解説
2 五月二十八日松野尾村に山本一郎を訪ひ三十日その案内にて弥彦神社に
  詣で山路を国上に出で良寛禅師が幽棲の故址を探る(第2首)
    むらぎもの こころ かたまけ しぬび こし 
                 この やま の へ に うぐひす なく も
歌の解説
3 その日国上村源八新田なる森山耕田が家に宿りて禅師が手沢の
  鉢の子を見る(第1首)
    あさやま を こころ かろらに くだり けむ 
                 きみ が たもと の はちのこ ぞ これ      
歌の解説
4 その日国上村源八新田なる森山耕田が家に宿りて禅師が手沢の
  鉢の子を見る(第2首)
    さすたけ の きみ が たなれ の はちのこ を 
                 まさめ に みる か わが ひざ の へ に 
歌の解説
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