会津八一 鹿鳴集・斑鳩(十二首)
                       大正十四年八月
斑鳩 いかるが。珠数掛鳩(じゆずかけばと)をいふ。雀科の鴲(シメ)に似たる一種とする説あるも、作者は採らず。この名につきて従来の国語事典の定義まちまちにて一致せず。中には全く異る二種の鳥の属性を総合して一種として書けるもあり。それにつきて『渾斎随筆』のうちに詳説したり。   (自註鹿鳴集より)
   

 
 親友山口剛(早稲田大学教授・国文学者)を誘って小鳥を買いに行った時の作品である。八一の心温かい山口剛へのまなざし、鳥たちへの思いが優しく詠われる。 
 この斑鳩12首は最初、山光集(第2歌集)に収録されていた。
 筆者は山光集例言で“・・・ただ、「斑鳩」は大正十四年八月の作にて、時代としては、まさに『鹿鳴集』に入るべくして脱漏したるものなれば、最近に作れる他の諸篇とやや趣を異にするところもあるべし。”としていたが、後の会津八一全歌集で鹿鳴集に移した。本解説はそののちの自註鹿鳴集を定本としているので、鹿鳴集の斑鳩として取り扱う。
                                    

                                     会津八一の歌 索引
1 八月二十三日友人山口剛を誘いて大塚に小鳥を買ふ(第1首)
         とりかご を て に とり さげて とも と わが
                   とり かひ に ゆく おほつかなかまち    
歌の解説
2 八月二十三日友人山口剛を誘いて大塚に小鳥を買ふ(第2首)
         みち の べ は なつび てらせる ごこくじ の 
                   かど めぐり ゆく おほつかなかまち  
  
歌の解説
3 八月二十三日友人山口剛を誘いて大塚に小鳥を買ふ(第3首)
         いたり つく とりや が みせ の ももどり の
                   もろごゑ しぬぎ こま ぞ なく なり 
        
歌の解説
4 八月二十三日友人山口剛を誘いて大塚に小鳥を買ふ(第4首)
         ふみ あまた とも は よめれど おほつか の
                   とりや に たてば わらわべ の ごと 
       
歌の解説
5 八月二十三日友人山口剛を誘いて大塚に小鳥を買ふ(第5首)
         こまどり の なき の まにまに わが とも の
                   かがやく まなこ わらわべ の ごと 
  
歌の解説
6 八月二十三日友人山口剛を誘いて大塚に小鳥を買ふ(第6首)
         ももどり の なき かふ みせ の たな の うえ に
                   ましろき はと の ただに ねむれる 
      
歌の解説
7 八月二十三日友人山口剛を誘いて大塚に小鳥を買ふ(第7首)
         たな の うえ の ちひさき かご の とまりぎ に
                   むね おしならべ ねむる はと かな 
   
歌の解説
8 八月二十三日友人山口剛を誘いて大塚に小鳥を買ふ(第8首)
         わが こふる おほき みてら の な に おへる
                   とり の いかるが これ に し ありけり 
歌の解説
9 八月二十三日友人山口剛を誘いて大塚に小鳥を買ふ(第9首)
         こまどり は きみ が まにまに この はと を
                   おきて かふ べき とり も しら なく に 
歌の解説
10 八月二十三日友人山口剛を誘いて大塚に小鳥を買ふ(第10首)
         ふろしき に つつめる かご の とまりぎ に
                   かそけき あのと きき の よろしき 
歌の解説
11 八月二十三日友人山口剛を誘いて大塚に小鳥を買ふ(第11首)
         おちあひ の のなか の もり の ひとつや に
                   さげて わが こし かご の いかるが 
歌の解説
12 八月二十三日友人山口剛を誘いて大塚に小鳥を買ふ(第12首)
         こがくれて なけや いかるが あす より は
                   はた の はて なる ひと も きく がに 
歌の解説
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