<神の国のおとぎ話>
1)
あるとき、伊勢のお社の裏山にヤクザ者が住み着いて、徒党を組んで近隣の村を傷めつけておりました。ヤクザ者は、なにやらとてつもない武器を持っているようでこの国の警察や軍隊も取り押さえることが出来ませんでした。そこで、ウサ国の軍隊がやってきてやっつけてやろうということになりました。実は、傷め付けられた村には、ウサ国の大切な松ヤニを採る林があったのです。しかし、そのためには、伊勢のお社の大切な神域にウサ国の兵隊を土足でいれなければならないということになりました。神官たちは反対しましたが、ヤクザ者を押さえつけるには他に方法がないということで渋々認めることになりました。兵隊たちにやっつけられたヤクザ者は「もうしません」といいましたが、ウサ国の兵隊は「また降りてきては困るから」といって、神域に居座って警戒を続けていました。
2)
この国の「右翼」と呼ばれるものの中に「緒佐間」という者がおりました。彼は、もともと北の国の「小無荷素戸」や、その協力者に反対して戦うためにウサ国の様々な助けをうけておりました。しかし、神官たちの「いい加減にして欲しい」と言うつぶやきを聞いて「俺が何とかしてやる」と言いました。彼は「神域を汚す無礼者を許してはならん」と、同志を募り、バブルで儲けたお金をつぎ込んでウサ国の兵隊を追い出す運動をはじめました。しかし、この国の国民も政治家も、ウサ国のお金や兵隊の力に頼らないとやっていけないことが判っていますので、表立って彼を応援はしませんでした。彼は一部の神官たちと「ウサ国には天誅が下されねばならぬ」という“みことのり”を発し、ウサ国に対して戦いはじめます。
3)
彼は、同志たちに「神風特攻隊を見習え」と教えてウサ国の中心に突っ込ませ大勢の人々が死んでしまいました。これに対してこの国の一部の人間は思わず「やったやった」と叫んでしまいました。ウサ国の統領(松ヤニ屋の親戚だそうですが)は、自分の国がはじめて直接攻撃されたことに怒って“「緒佐間」を捕まえろ、かくまう奴も同罪だ”と叫びます。この国の人も、その他の人も「そんなことをしたらウサ国が怒るのも当然だ」と言います。彼は、熊野の山の中の村でヤクザ者たちと「小無荷素戸」との争いの後、ヤクザ者を追い出した若者たちと一緒にいました。この村は、ウサ国が松ヤニを運ぶ道にしようと考えたこともあり、若者たちを助けてくれた隣村の村長には、たんまりとウサ国のお金が入っていました。若者たちは、二度とヤクザ者が入ってこないように厳しい掟を定め、村の者の中には厳しすぎる掟に反対するものも出ました。しかし、若者たちは貧しい自分たちに資金を出してくれた「緒佐間」や右翼の同志たちを大切に思い、彼らを追い出すことはとても出来ません。彼らは、村の宮司さんたちと相談し「緒佐間さんには出て行ってもらうほうがいいかもしれない」という張り紙をするのが精一杯でした。
4)
ウサ国は、隣村の村長に「いいか、わかってるだろうな」と脅しつけた上で、村を攻撃しはじめました。「村人や、この国の人が敵ではありません。緒佐間と右翼とが敵です。」といいながらミサイルや爆弾を落とします。食料も同時に落としましたが「どうせ毒が入ってるに違いない」と村人は無視してしまいました。この国の人々は「緒佐間」は無茶な事したのだから、やっつけられてもしょうがない、若者たちもみんなが忠告したのに「緒佐間」をかくまったのだからしょうがないと、表向きには言います。けれども「XXさんが死んだらしいよ」とか「ZZが怪我した」と言う話が聞こえると、同じ国の人間として黙っていられないという人が増えてきました。「もともとウサ国がムチャなのに」「どうせウサ国は、この国の人間を馬鹿にしているから平気でこんな目にあわせるのだ」という声が出るようになりました。隣村では「村長はおかしいじゃないか。神の国の民草とウサ国とどっちが大切なんだ」という声も出てきます。「そもそも、北方領土を返せという俺たちの声に、ウサ国は耳を貸さないじゃないか、それが根本だ」とか、中には「俺たちも緒佐間たちみたいにカッコよくやろうか」なんて言うものも出はじめました。はたしてこの先、神の国とウサ国はどうなるのでしょうか。(続く?)

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